[インタビューズ]ライフネット生命保険 代表取締役社長 出口治明さん 4/4

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ライフネット生命保険 出口治明社長へのインタビュー第4回(全4回)です。

次の企業の選び方

若い世代が自分で「ここではないな」と気づいて動き出すのが一番いいんでしょうね。

それが一番いいと思います。でも気づかなければ国が国策としてやるしかない。GDPというのは基本、人口×生産性なんです。人口はすぐには増えないので、生産性を上げようと思ったら元気のよい新しい企業に人を移すしかないわけです。働く側も、みんな転職するのが当たり前で、終身雇用なんかないんだということを社会全体が認識していかなければ、日本はもたないでしょう。

新卒の学生が就職活動でそれを見いだすのは難しいかもしれません。

就活メディアは「10年後に輝く産業を見つけましょう」とか「やりたい仕事を見つけましょう」というでしょう。でも、やりたい仕事なんて、彼氏や彼女と同じで、つき合ってもいないのにわかるはずがない。10年後に輝く産業がわかったら、みんなそこの株を買って大金持ちです。でも違うでしょう?

だから「企業は相性で選びましょう」と言っています。何かのご縁があったら、彼氏や彼女と同じようにつき合ってみなさいと。でもそれだけでは心配だろうから、最低限、過去10年間の株価もしくは売上をチェックしましょうと。

入社して自分に合っていなかったらどうしますか、と聞かれますが、それでも3年は黙って必死に働くようにと勧めています。3年あれば必ず何かしらの技術が身につきます。3年経って合わなかったら再チャレンジすればいいのです。

日本人は仕事について深く考えすぎなんでしょうか。

考えすぎではなくて、考えていないのです。考えていれば、さっき言ったように仕事なんか「どうでもいい」ということがわかります。世界の状況を見れば日本の労働市場が変だということもわかります。自分の頭で考えずにディテールだけ必死に煮詰めているだけです。

若い皆さんには、ぜひ仕事や人生について正面から考えてほしいですね。仕事よりもはるかにパートナーとの人生が大事だとわかるし、パートナーを選ぶのと同じように仕事を選んでも何もおかしいことはない。相性が悪ければ、人から離れるのと同じようにその職場から離れて構わないのです。

日本は若い人から見たら有利な国です。なぜなら団塊世代がいずれ消えるので、中長期的に見たら労働力が不足する国ですよね。だから本人が健康で、物事をしっかり考えていれば心配ありません。道を探すことをしなくても、従業員300人未満の企業は有効求人倍率が3倍から4倍あります。

就職氷河期で採用を控えた企業は年齢構成がいびつになっていますよね。

青田買いで採用することしか考えていないので「氷河期」という言葉が出てくるのです。労働力の流動化を前提にすれば、その発想がなくなりますよね。過去50年のガラパゴス的な労働慣行を無意識のうちに前提にして考えてしまう。

ここをすべて壊して「同一労働・同一賃金、儲かったら人が増えて給料も増える、損したら首を切って給料も減る」という原理原則をもとに考えたら、違う世界ができます。

もっと偶然を信じる

日本生命にいた頃から「次はこうしたい」と考えていたんですか?

まったくなかったです(笑)。僕は一度「遺書」を書いたんです。55歳のときに当時の社長とぶつかり、生命保険とは関係ない子会社へ出向になりました。もう生命保険業界に戻ることはないな、と思いながら、やっぱり先輩から引き継いだ伝統を形に残したいと考えました。そこで、諸先輩方から学んだ自分の知識や正しい保険のあり方をまとめたのが『生命保険入門』なんです。遺書を書くということは死んでしまったということなので、その後は生命保険を忘れて大学改革の仕事に打ち込んでいました。

そこに、あすかアセットマネジメントの谷家衛さんという方が「保険業界について聞きたい」とやってきた。話しているうちに「新しい保険会社を作りませんか」と言われて「はい」と返事をしてしまった。ここからすべてが始まっています。

そのときに浮かんだのが遺書として書かれた『入門』ですか?

そうですね、ここで「はい」と答えてしまったのは「この『入門』に書いたことを自分でやれ」と神様が言ってるんだと。新会社のアイデアはすべて『生命保険入門』に書いてありました。

よく「どうして58歳で起業のモチベーションがあったんですか」と聞かれるのですが、それは間違った認識です。ビジネス書ではものすごい苦労の末の起業のような物語があふれているので、モチベーションがあって狙って起業すると考える人がたくさんいます。

でも古典や歴史書を読んでいると、そういう出会い方は不自然なんです。歴史を見ていると実は偶然のほうが圧倒的に多いのです。人間はやりたいと思っても、やりたいことができるようになるほうが少ない。

谷家さんに会わなければ、僕はまだ東大に勤めて大学改革を続けていたと思います。その途中、偶然に谷家さんに会ったので、今ここにいるのです。(了)

お話が楽しく、時間をオーバーしてしまい申し訳ありませんでした。繰り出されるのは労働市場の話から人生の捉え方までさまざま。読書と経験に裏打ちされたエピソードに圧倒されました。今日はどうもありがとうございました!

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関連サイト

ライフネット生命保険公式サイト
http://www.lifenet-seimei.co.jp/

ブログ:デグチがWatch

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『生命保険入門 新版』岩波書店

『平成24年版 厚生労働白書 社会保障を考える』
http://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/
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