[インタビューズ]ライフネット生命保険 代表取締役社長 出口治明さん 2/4
ライフネット生命保険 出口治明社長へのインタビュー第2回(全4回)です。
外に出るから学べることがある
失敗をしたくない、だから外に出たくないという人も増えています。
こないだTPPの話をしていて、ある人が「出口さん、日本の外交は交渉力が全然ないんですよ」と。彼は「交渉力がないのがTPPに出ていってどんな目に遭うかわからない、だから出ていったらあかんのです」というので、それは賛成できないと言いました。
この論理は「女性とつき合うのが怖いから5年間閉じこもっています」と言っているのと同じです。5年間閉じこもっていたらどうなりますか。交渉力がつかなくて、年だけ取って、さらに女性に相手にされなくなります。
交渉力がないという自覚があるなら、出ていって学んでこなければ永遠に対等なお付き合いはできません。昔は武士から手討ちとかありましたけれど、今はいい時代で命まで取られることはありません。やってダメだったら、その失敗から学べばいいと思います。
仕組みをつくる
あまり積極的でない人に外に出てもらうために、今までどんな説得をしてきましたか?
まず仕組みを作ることです。日本生命時代、部下に業界誌へ論文を寄稿するよう勧めたことがありました。業界誌はいつも原稿がなくて困っている。そこへ電話して、2カ月に1回うちから原稿を出すので必ず載せてくれ、と確約を取りました。
みんなに「論文を書け、勉強になる」と口でいうだけでは誰も書きません。そこであみだくじを作って引いてもらうんです。引くと数字が当たって、その号の原稿担当はあなたですよ、と。
このままだとパワハラになってしまうので、次は説得です。論文を書くのは一石三鳥なんだと説きました。まず原稿料が出る。2つ目は、何でも書いたら賢くなるぞと。3つ目はひょっとして賞を取ったら人事が喜ぶかもしれないよと。責任を持ってサポートするから書いたらどうだ、と話すと、くじが当たってしまったことだし「じゃあ」という気持ちになる。
可能性があるぞ、と怖さよりワクワク感のほうが前に出るんですね。
初めは強制的な仕組みですが、実際に原稿が載ったり、賞を取ると大きな自信になります。ほとんどの仕事でこういった仕組みを作って、若い人に任せていくべきです。
これは他の会社でもやってほしいことですか。
もちろんそうです。今年(平成24年版)の厚生労働白書はご覧になりましたか? 普通は10人くらいで書くのですが、今回は20代30代の若手官僚が2人で全部書きました。何を書いても責任は俺が取る、と腹を決めた上司が素晴らしいと思います。引用文献を見ると『正義論』とかマイケル・サンデルとか、哲学的なものが含まれている。情熱にあふれていて胸を打ちます。(続く)
『平成24年版 厚生労働白書 社会保障を考える』
http://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/
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