[インタビューズ]ライフネット生命保険 代表取締役社長 出口治明さん 3/4

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ライフネット生命保険 出口治明社長へのインタビュー第3回(全4回)です。

あふれる人材をマーケットへ

うちの岩瀬(副社長)に聞くと、ハーバードの卒業生の半分は大企業や機関に行きますが、もう半分はその選択をしないそうです。家の農業を手伝うとか、NPOの活動をするとか、起業するとか。すでに権威ができあがっている場所より、挑戦する道を選ぶ人が増えています。

しかし日本は青田買いという制度があって、ここから労働力の分配が誤っているわけです。ある大学の先生に聞くと、大学には8000社の求人があるのに学生はそのうち1000社しか選択しない。メディアの影響で、名のある会社がいいとか、労働条件がいいとか、そんな選び方になってしまう。残りの7000社の中に将来のソニーやホンダがあるんですけどね。

もう生産性が上がらない業界に優秀な人が送り込まれて、これから伸びる可能性やチャレンジする産業にはいっこうに人が回らない。国を豊かにしたいのであれば、雇用規制をどんどん緩和し、大企業が抱えている優秀な人をマーケットに出し、これから伸び盛りの産業の生産を上げるのが一番です。

これは優秀な方に対してだと思うのですが、国全体で考えるといろんな人たちがいます。

でも、どんな産業であってもリーダーとなって引っ張っていく人材は必要です。JALのケースはいい例です。JALは労組が強くて国際線のパイロットは3泊で1往復していました。でも世界では1泊で1往復する勤務がある。JALは必要以上に人材を抱えすぎていたんですね。今回の再編で余分だった人材がマーケットに出てきた結果、格安航空会社がパイロットを獲得して、競争の土俵に上がることができた。

するとパイロットから始まって、整備や地上勤務の人にもつながっていきますよね。新たにチャレンジする舞台ができて新しい雇用につながると。

そうです。効率が悪いところを圧縮して人を出せば新しいマーケットができます。

非正規雇用が必要ない社会

経営者の視点でお話を伺ってきましたが、働いている側からはどう「動くとき」を把握すればいいと思いますか。

難しく考えるからわからなくなります。もしラーメン屋のバイトをしていて、近くにもっとおいしいラーメン屋ができてお客が減ったら、どうしますか。自分の店で工夫するか、そのお店に移ってバイトをするか、どちらかしかない。これと同じです。自分がいるところの状況はみんなわかっていると思うのです。あとは、自分がどちらを選ぶか。

僕は、人が動くことは首を切ることを含めて正しいと思っています。これには原体験があります。

イギリスで駐在していたとき、日本生命が出資していたスイス銀行がスイスユニオン銀行と合併しました。そのときスイス銀行のCEOに様子を聞きに行ったのです。彼は「イギリスにいるスイス銀行の3000人とユニオン銀行の3000人を足して3000人にする」と言った。要するに2人に1人は首を切るのだと。僕はこれを「アンヒューマンだ」と非難しました。

すると彼はその言葉は聞き捨てならない、取り消してくれと怒りました。なぜなら、1つのポストに2人の有能な人は要らないからです。片方を選べば片方は違う仕事をしなければいけない。しかし選ばれなかったほうも本来能力を持った人材です。能力を発揮させずに会社で飼い殺しするのか、そのほうがアンヒューマンではないかと。

考えてみたらその通りです。そのときから「首を切ることは正しい」、人は能力を活用できる場所に動くべき、と捉えるようになりました。

働く人が流動するとき、今は非正規雇用やパートがクッションになっている現実があります。

なぜクッションになるかというと、労働の流動性がないからです。僕はこの制度は歪んでいると考えています。本当の流動性、「いつでも首を切ることができる」「いつでも飛び出す自由がある」「やり直しが後ろ指をさされずにできる」、こういう当たり前の労働市場があれば、そもそも正規・非正規という区別が必要ないじゃないですか。

ところが日本は労働法に比べて判例法が非常に保守的で、1回会社に入ったら一生定年まで面倒を見るという誤った考え方があります。そうすると企業もビクビクして、正規で採用するとリスクが大きいから非正規で採用する、ということを一生懸命やるわけですよね。

同じ仕事をしていて正規と非正規で待遇が違うだなんて、非人道的そのものです。世界の常識は同一労働・同一賃金、同じ仕事で同じ給料が出て当たり前。正規や非正規という区別は、日本の労働市場が歪んでいるから生まれてしまっているというのが僕の考えです。

何よりも日本は国を挙げて労働の自由化、流動化を進めるべきです。古い体質の企業から、これからの産業に人が流れるようにする。人はもし首を切られたら、首を切ることのない将来性がある企業を探そうとします。(続く)

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