[書評]『情報は1冊のノートにまとめなさい 完全版』奥野宣之 著
- 2013.12.02
- 更新日:2020.06.06
- 書評・評論
私が奥野宣之さんを知ったのは、大ヒットした旧版の『1冊にまとめる』シリーズの著者としてではなく『現代語訳・学問のすすめ 』の訳者としてでした。読書会で初めてお会いし、そのときに「あのノート本の!」という感じで。だから旧版を読み込んでいるファンの方とはまた違う距離感のレビューかもしれません。
旧版・完全版を読んでその情報処理システムにびっくりしました。ノート1冊なのに、目的を持って使い込むとここまでいけるのかと。奥野さん流にいうなら「ノート1冊だからこそ使い切れる」、紙に記号やアイコンを施して記憶とつなげると、シンプルな仕組みだからこそ豊かに発想できる。
ただ、1つだけ違和感があって、その違和感と向かい合った結果、大きな事実にぶち当たりました。奥野さんすみません、私、分けたい(笑)
ペンネームで仕事をしているせいもあって、素の自分と仕事の自分をすべて1冊にまとめて放り込むのが気持ち的に難しい。それと、昔から文字ベースの日記を書いて事実や思い・シズル感を想起するクセがついているので、工作するのは少しハードルが高いのかもしれません。
私の情報整理を見返してみると、今のところ4つです。
①仕事用ノート:時系列にどんどん書いていく
②読書ノート:読みながら主観や印象的なフレーズを残す
③日記的ノート:その日に感じたこと・事実を数行残す
④Postever:思いつき、メモ、感想、愚痴をスマホから入れる
④のPosteverというのはEvernote用のiOSアプリで、1日何回書いても同じ日付けでまとめて1ノートにしてくれる、というものです。一番自由にメモしているのはこれだと思います。
奥野さんはこれらを1つにしました。第1章、第2章は1冊にまとめるメリットや方法が書かれています。
第3章以降は1冊にまとめていない私も参考にしたい話がたくさんありました。どこでメモるか、どうメモるか、何をメモるかは、記録する上で共通だからです。
たとえば略語の使い方や記事の残し方。あと、ペンを変えることで情報の種類も一目瞭然になること。色を変えるんじゃないですよ、ペンを変えるからわかることがある、というのは目からウロコです。リゾートをつくる方法は私でも使えるかも。
第5章は溜めた情報をどう使って、新しい発想につなげていくか。
おそらくこの第5章のために「1冊」や「書き方」「溜め方」があるんですよね。最終目的地は「いかに今までと違う発想を生み出すか」。そのためのメモメソッド。決して1冊に取りまとめるのが目標ではないでしょう。
私も、道筋は違うもののやっぱり「新しい発想がほしいなあ」と思って4つ分けで来ました。だから第5章以降で紹介されている材料と記憶、発想のつなげ方は勉強になります。それぞれ「ほふく前進」「植え替え」「コラージュ」など独特の名前がついているのが奥野さんらしい。
ノートに書いてあるとマーキングや加工がしやすく、手軽に開くことができるメリットがあります。デジタルはたしかにここが弱い。折衷案として、この本を読んだあとにPosteverで書きためていたものを一度プリントアウトしてみました。
付録の文房具情報も面白いです。チラチラ聞いて気になっていた製品も写真つきでガッチリ載っているので探してみよう。
この本を通して奥野さんがくり返し訴えているのは「自分の思考への敬意」と体験のムダのなさ。情報を集めながら自分を好きになれるメソッドだと思います。
奥野さんは本文内でメモ例としていろんな事実や発想を書かれているのですが、個人的に気になったのはP.150の「思い浮かんだこと」でした。うーむ。
★奥野宣之さんに古墳愛についてインタビューした記事があります
【インタビューライター 丘村奈央子】
★ホームページ・記事・コラム文章作成 →制作メニューと料金
★あなたのプロフィール、一緒に考えます。 →プロフィール作成サービス
★お問い合わせ →フォーム
「聞き方」を動画で学べる!
-
前の記事
[書評]『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』林英恵 著 2013.12.02
-
次の記事
世紀末に読んでいた99冊 その6 2013.12.02