[書評]『反省させると犯罪者になります』岡本茂樹
こちらのライターさんに「面白いですよ」と勧められて買った『反省させると犯罪者になります (新潮新書)』。センセーショナルなタイトルですが、とても堅実な筆致で書かれていて納得。悪いことをしたら「反省させる」という行為がどれだけ危険かがわかります。
この本のタイトルを旦那に伝えたところ「いや、反省はしなきゃダメだろう」。それは多くの人に共通する反射だと思います。私もそうでした。でもこの本の趣旨は「反省しなくていい」のではなく「内発的な、心からの贖罪につなげるにはどうすればいいか」です。
著者は刑務所での累犯受刑者の更正支援に関わっています。いくらいろんな場所で「反省しなさい」「はい、反省しました」のやり取りをしても、受刑者の4割はまた罪を犯して戻ってくるそうです。本当に悪いことをしたと思っていない。
犯罪に関わった人の例や、書かれた「反省文」が提示されて、具体的に何が問題なのかを細かく解説しています。反省文を何度も書かせれば「反省の技術」がうまくなりますが、反省が深くなるわけではありません。
「どう書けば相手の印象が良くなるかわかってくる」というくだりは、思い当たる節があってちょっと耳が痛い…。たしかに読書感想文とか反省文は「こう書けばいける」のを昔から知っていて、そのフォーマットに沿わせていたかも。
もともと罪を犯す人は自己抑圧が強くて、それが爆発するケースが多いとのこと。なのに「反省しなさい」という言葉をかけると、さらに抑圧させるだけで根本の解決にならない。
なぜ罪を犯したくなったのか。何を解消しようとして行ったのか。今まで我慢してきたことを一度本音で解放して、本当に苦しんでいたことを見つめる。その先にやっと、内発的な心からの反省が生まれるといいます。
本の中には受刑者や罪を犯した人が登場しますが、読みながら考えたのは自分のことでした。子どもを持っている人は、たぶん育て方を考えたくなります。
私は小学生から高校生まで日記をつけていて、思えばそこが自己解放になってグレずに済んだのかもしれません。中身はデスノート状態ですからねえ。デスノートに理屈をつけて書くようになって今の仕事につながっているので、何が幸いするかわかりません。
抑圧は我慢。「こうあらねば」「これをしてはいけない」と子どもに言い続けると、ひいては「人に頼ってはいけない」という深層心理につながります。「他人に弱みを見せられる人間」になれば犯罪という形で爆発することが格段に減るのではないか、と著者は仮定しています。
必要な我慢もありますが、無理を強いていることもありますよね。もうちょっと自分と他人にゆるく関わってもいいのかなと思いました。
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