[書評]『スパイのためのハンドブック』ウォルガング・ロッツ

[書評]『スパイのためのハンドブック』ウォルガング・ロッツ

20130402-100210.jpgスパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)』、帯の佐藤優氏のほうが目立っていて氏の本と間違えそうですが、イスラエル軍の秘密諜報部で実際に活動していた著者の日本語訳です。どうやってスパイになったのか、実際にどんな活動をするのか。かなり詳しく書かれています。

映画などから華々しい活動を想像してしまいがちですが、実際はもっと地味で孤独なもの。ある情報を得るために誰かに近づく必要があるなら、その人と近づくための人脈や詐称する肩書きをカバーできる経験・知識を準備しなければいけません。

数年がかりで「仕掛ける」ことは珍しくなく、スパイとしての準備をしながら怪しまれないための「普通の生活」も送ります。よっぽどの忍耐力、緻密さ、プラス真顔で嘘をつける大胆さが求められます。

面白いのは自分を派遣するエージェントとの関係。報酬額の交渉や「どうすればよいスパイだと思ってもらえるか」という点にもページが割かれていて、「お仕事としてのスパイ活動」の難しさが伺えます。

最初は映画『陸軍中野学校』を連想してストイックな厳しい世界を想像していましたが、軽妙な言い回しで書かれているのでスルスル読めます。もちろんいろんな修羅場を経験しているのでしょうが、消化しつつここまでユーモアを含めて書けるのはこの人の能力の高さを示しているんでしょうね(余生を送ることができるスパイは少ないので)。

電車の中で読んだら周りの人が気になるかも。

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)

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