NHK放送博物館で大作家のハガキに思う

NHK放送博物館で大作家のハガキに思う

東京のど真ん中に長く滞在することがあまりないので、これを機会に前々から興味があったNHK放送博物館に行ってきました。日比谷線の神谷町駅で降りたら徒歩8分。入場料無料! 連休だったこともあって親子連れが結構来ていました。
ことばと暮らす。-放送博物館
NHKは、昔は渋谷ではなくて愛宕山に拠点があったんですね。高層ビルがない時代は東京が見渡せて、電波が遠くまで飛ばしやすかったとか。
でも標高が26メートルと聞いてびっくりしました。山というより、丘? もっと高そうなイメージ。
ラジオ放送の実験開始から衛星放送、デジタル放送に至るまでの機材や資料がたくさんあります。玉音放送のオリジナルレコードや、高柳氏が初めて「イ」の映像を送った機材の復元、手書きの台本などなど、テレビラジオの文化に興味がある人なら楽しめますよ。
なかでも印象深いのが、大作家の手書きのハガキたちでした。
ラジオで昭和24年から60年近く続いた長寿番組『私の本棚』というのがあります。注目の本をアナウンサーや俳優が朗読する番組で、取り上げる本の作者には了解を取る必要がありました。
昔はそれをハガキでやってたんですね。
井伏鱒二や武者小路実篤のような大作家が、NHKの担当者宛に直筆で、「お申し出の件、了解いたしました」とか「○日は在宅ですが、○日から留守にしております」のような内容をハガキで送っている。ものによっては「即日速達」の判が押されていたり。
武者小路実篤は宛名から芸術的です。色紙感覚で自由に文字が配置されている(笑) ビジネス用の宛名書きで「ここは1字下げます」とか「ここが書き始めです」なんてやっているのが小さく感じられるほど自由。見た瞬間「常識って何だっけ」と衝撃を受けました。
もともとハガキはこうやって書いてやり取りしていたんだなあ。今のケータイメールみたいな扱いですよね、きっと。さらりと書き付けられる。気楽で安価で、そこそこ早く届けられる。電報ほど急がない。
筆跡や選ぶ言葉、レイアウトを含めた文字文化が日常にあった時代、ちょっと羨ましいかも。

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