【本】岡本太郎が芸術を語ったら、の一冊
- 2011.07.10
- 更新日:2013.07.25
- 書評・評論
岡本太郎の『今日の芸術―時代を創造するものは誰か 』(光文社知恵の森文庫)。
「きょうのげいじゅつ」でなくて「こんにちのげいじゅつ」、だと思います。はい。これまた元の本は1954年発刊です。昭和29年に岡本太郎が芸術について語った本。
なにせ芸術は爆発だという人なので、「芸術」を捕まえて遠投みたいにぽーんと放たれてしまったらどうしようと思っていました。でも、文章はとても親しみやすく、わかりやすい。たぶん小学校高学年の子が読んでも十分に伝わります。すぐ前で太郎さんが熱く語っているみたい。「芸術」をちょこんと隣に置いてもらったふうです。
「うまく」描こうとするのは何かと比べているからで、相対的な縛りです。本当はみんな表現したいと思っているし、能力がある。どれが秀でている、と考えるのは間違っている。へんてこに描いてやれと思うくらいがちょうどよく、そこでやっと本来の自分の表現が出てくる。
絵画だけでなく、生活全般にこの考え方が応用できそうです。文章を書くのも似ているかもしれない。「うまく」とこだわると何も出てきません。
先端の「芸術家」はあえて誰もわからないところに切り込んで戦い、表現を手に入れていく人たちのこと。これは一握りの意志を持った人だけです。でもみんなが「芸術家」にならなくてもいい。
60年近く前の文章なのにまったく古びていません。下手な新刊よりも生身な感じがするのが不思議です。
今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)