「ブログを書く」と「本を書く」はどう違うのか
4月末に出した電子書籍『立てる・埋める・直す 3ステップで確実に書き上がる ビジネス書 実用書の書き方』は、おかげさまで多くの方に購入され、感想をいただきました。2017年に『人見知りで出不精のOLがコミュニティの女王になった理由』(大和書房)という本を出した中村薫さんもその中の一人です。自分が書いた狙いとはまた違うメリットを教えてもらいました。
先日会って読んでいただいたお礼を伝えたとき、開口一番、薫さんが質問しました。
「ねえ丘村さん、これ何で『ビジネス書』?」
えっ。それは版元の編集者さんが「コンテンツを持っているのに書き切ることができない人が多いので、彼らがすぐ使える本を作りたい」というところからスタートしたからだったんです。本を書きたいけれど書けない人を対象に構成したので「ビジネス書」は欠かせない要素でした。でも薫さんは「この本はブロガーも活用できるのでは」といいます。
じゃあ、ブログを本にしたいときも使える?
薫さんはいろんな集まりを作るのが得意で「ハンバーグの会」や「マネーの会」、その他サロンや勉強会を行っています。メンバーにはすでにブログなどで情報を発信している人も多く、コンテンツをまとめたいけれどまとめられない場合はこの『ビジネス書 実用書の書き方』が役立つと思ったとのこと。
それを聞いて私は「いや、それは難しいと思う」と答えました。なぜならブログの中身=ビジネス書の企画として通すのは至難の業だからです。
ブログと本は、扱う内容と性質が違う
ブログでコンテンツを貯めている人はたくさんいます。更新後の反応の有無に関わらず、自分の知識を形にしてアウトプットするのはのちのちのキャリアづくりや情報整頓に有益です。
では、貯めたブログ記事をそのまま本にできるか。答えはほとんどがNoです。なぜならブログと本は扱う内容・性質が違うので、そのまま移植しても版元が納得する売上にはつながりにくいからです。
ブログと本の構成の違いを簡単な図にします。
ブログは個人のキャラクターや日常がオープンになるため、読者との親近感を醸成するのによく使われるツールです。【私】がブログの主軸に据えられて、そこから派生するカテゴリについて記事が積み上がるケースが多い。
一方の書籍は【テーマ】が主軸に据えられて、テーマにまつわる内容が記述されるものです。【テーマ】は書籍として販売したときにできるだけ多くの人に興味を持ってもらえるもの、時代にマッチしたもの、ウケが良いものが選ばれます。そうしなければ売上が立たず、版元が投資する意義がなくなってしまうからです。
「ブログをそのまま本にする」ということは「【私】を主軸にした書籍を作る」のと非常に近い作業です。【私】が超有名人で名前を出しただけでいろんな人が関心を持つほどならともかく、まだ露出が少ない【私】がブログから本を作るのは難しいでしょう。
各章に「私の…」を並べて無料で読まれるブログなら読者を得られたとしても、商品として制作・販売するのは大変です。
だから「本」というボリュームを想定して組み立て方を解説した『ビジネス書 実用書の書き方』は、ブロガーには合わないのではと考えました。しかし薫さんはここで新しい視点を提示してくれました。
本は、ブログの1カテゴリを深めることができる
たしかにブログ全体をそのまま本にするのは無理かもしれない。でも【私】が強みだと考えるカテゴリ、これから打ち出していきたいカテゴリを深めるなら有効だというのです。
私もなるほどと思いました。ブログ全体で捉えるのではなく、深めたいコンテンツを絞って『ビジネス書 実用書の書き方』のメソッドを使ってみる。そうすればこれまで気づかなかった項目を記事にしたり、新しい広がりを見つけたりできそうです。
先ほどの図に直すとこんなイメージです。
【私】が主軸だったブログの中でも、強みや一番伝えたいことを先ほどの【テーマ】の位置に据えて深めればいいのです。この主軸が「多くの人に興味を持ってもらえるもの、時代にマッチしたもの、ウケが良いもの」に近ければ、書籍化が実現するかもしれません。
図では「ビジネス」を選びましたが、これが「料理」「観劇」でも他の人より秀でていたり特殊な経験があったりすれば出版物として検討する価値があります。
それに、書籍にならなくても深掘りのプロセスを経ることで新しい記事のタネや切り口を見つけたり、体系立てて情報を整頓したりすることは十分可能です。ブログへのアウトプットの形も以前よりは整うので、やって損はありません。深掘りしたカテゴリの記事は必ず厚みが増します。
結論、書籍の書き方はブログでも生かせます
薫さんの知り合いにも「このテーマに絞って項目を探せば、まだまだ新しいコンテンツが見つかりそう」という方がたくさんいるとのこと。上記の使い方であれば『ビジネス書 実用書の書き方』に書かれている方法が活用できます。
特に下記の章はおすすめです。
第1章 目次を【立てる】
自分が書ける文字数を考える
必要な文字数を書ける量で割ってみる
たどり着いてほしい成果まで、時系列で追ってみる第2章 良い小見出しを作るコツ、見つけるコツ
具体的な名詞や行動を言葉に表す
ペルソナを立てる
最初は上から目線、文句目線でもいい
「こうすればいいのに」を拾う
これらはビジネス書や実用書だけでなく、ブログの記事を増やしたいときや内容を深めたいときに有効な手段です。おお、たしかにそうだった。ビジネス書のことばかり考えていたので、薫さんから教えてもらうまで全然気づきませんでした。
タイトルでは『ビジネス書 実用書の書き方』ですが、それ以外でも大丈夫。手持ちのコンテンツを深めたい方はぜひ読んでみてください。
■コミュニティの女王 中村薫のコミュニティのつくり方大辞典
■中村薫さんの本
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