音声入力は使えるか? 野口悠紀雄さんの『話すだけで書ける究極の文章法』を読む

音声入力は使えるか? 野口悠紀雄さんの『話すだけで書ける究極の文章法』を読む

音声入力という機能が登場してからずいぶん経ちます。しかし実用化にはまだ遠いと思っていました。話しかけても認識されなかったり、誤変換が多かったり。結局書き直したほうが早いので初めから「書いて」しまいます。でも野口悠紀雄さんの『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる』を読んで「そうでもないぞ」と考えを改めました。

機能を持ったデバイスが身近にある

野口さんは「古いやり方で慣れてしまった人は、新しいやり方に移行するのが難しい」といいます。PCを使うならキーボードとセット、それに慣れていると改めて方法を変えようとは思いません。変えるほうが大変だからです。でも、初めから新しい技術に触れる人はパッと取り入れて、古いやり方をあっという間に凌駕するといいます。音声入力もそう。

自分に当てはめると「やっぱり書かないとね」という反発心もあって、なかなか手が出ませんでした。音声で検索するCMを見たら「脳みそが退化するのでは」と思って良い気持ちがしません。それは今も同じです。

ただ、音声入力は本当に使うに値しないものなのか。捨ててしまうのは惜しい、気もする。ふわふわしたところで読んだのがこの本です。具体的な例が数多く載っているので、読み終わる前から「試してみよう」と背中を押されました。

何しろ当の機械は目の前にあります(うちはiOS)。いつもと違うところをクリックしたら、実はすごい機能が使えるようになる。おお、やってみるか。実際にメモを立ち上げ、日本語入力のキーボードの隅にある小さなマイクボタンを押して、話しかけてみました。

おおお、思った以上にすらすら入力する! 間違いも少ない! へええ。技術はこんなところまで来ていたのか。知らなかった。

自己文章の下書きなら向いている

この見出しのブロックは、声で入力したパートをキーボードで編集し直しました。iOSで試した場合、デフォルトの音声入力機能が一番認識してくれました。本の中に書かれていたアプリも試しましたが認識の速度が遅く、変換が難しい。

実際にメモに声を入れてみると、入力される早さにびっくりします。普通の速さで話してもだいたい文字間違いがなく入力できる。ただiOSの機能は連続で1分しか入力できないので、夢中でしゃべっているとあっという間に終わります。長い留守番電話メッセージを入れている感じ。

音声入力のコツは、出てくる文字をあまり見ないこと。文字を見ると目から情報が入ってきて、その中で組み立てようとしてしまいます。そうではなくて直接脳みそから出てきた言葉を口に出す、それが単純にスタンプされていくような気持ちでやれば自然に話せそう。

文字間違いはないけれど、文章の構成はめちゃくちゃです。だからやっぱり後から近く情報で編集する必要はあります。それは自分が構成立てて話してないからなんですけどね。

あと、しゃべるときも必ず1回、文章を頭の中で整頓してから口に出すプロセスがあります。だから何も考えずにしゃべればいいというわけでもない。今の私にとっては、文字で書くよりも口で話す内容を準備して声に出すほうが頭を使います。

正直、頭で考えたことをタイピングするほうがすんなり書けます。でも文字を見て書きながら情報を整理するスキルは、自分の声音を聞きながら話すときはまったく役に立ちません。意外なほど、話して入力するのは頭を使いました。

テレビやラジオのレポーターやアナウンサーは、毎日こうやって、目から見た情報や感じたことを全部言葉にして口に出すと仕事をしているんですよねえ。すごいなあ。

「書くことを捨てたくない」と思っていたのに音声入力に興味を持ったのは、4月から通っていた朗読ナレーション講座の影響もあります。読むのではなく話しかける気持ちが大事だと教わりました。

でも普段の仕事では声帯を使わず、頭と手だけで考えています。使うべきパーツを全然使っていないので錆びついているんです。比べて、やっぱり講座でうまい人は口を使い慣れていて、しゃべり慣れています。声に微妙な抑揚をつけて感情を乗せるのが自然にできるようです。

通い始めてから常々「どこかで声を出さないとなあ」と感じていました。そんな折りに出会った「音声入力」の本。どうせ家で1人で仕事をしているのだから、声を出しても誰にも迷惑をかけません。いつもと違う脳みそを使う感覚は新鮮で、これからも音声入力にチャレンジしたくなりました。

こうやってブログの下書きを書くのはとても有効です。たしかに本にあるとおり「書かなければ」というプレッシャーから解放されて、書き始めはハードルが低くなりました。好きに書いていいブログ、投稿、エッセイの類なら使うメリットがありそうです。ただ、私の場合、お客様用の文章まではまだ無理かもしれません。読まれるのが前提の原稿なので、読みながら書くのが最も早く仕上がりそうだからです。

思い込みをなくしてみよう

音声入力の実用的な使い方のほか、印象に残ったのは、先ほども述べた「古い方法にしがみついていてもいいのか」という問いかけでした。考え直してみると、新しいモノに対して自分の好き嫌いで使わないと決めつけている可能性が高い。野口さんは昔からそんな線引きを飛び越えて「使えるモノは使う」「合理的なら使い続ける」というスタンスです。そのフットワークは見習わなければいけないと思いました。

話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる 講談社

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