『舟を編む』を読んで、観て、読みました
2012年本屋大賞第1位に輝いた三浦しをんの『舟を編む』。賞をとったあとに原作本を読み、映画館でも観てきました。上映時間2時間20分は長いかと思ったら、まったく退屈せず。映画のパンフレットは必見。900円で128ページあります。装丁や中身、紙までこだわっている力作でした。
映画版の設定は微妙に原作と違います。年代が特定されて1995年からの話になっています。構成も絞り込まれて流れがとてもシンプル。でも醸し出している良い古さや世界観はそのまま、というより、もっともっと具現化されていて「ああ、こういう世界に住んでいる人たちだったのか」と納得します。
人物の会話に「間」がたくさんあって、それを大事にしたのでこんな長尺になったのではないでしょうか。でも役者さんたちがその「間」で見せてくれるものがあるので退屈しません。文章の行間を映像で見せてもらっている感じ。原作にもない行間が挟み込まれているように思いました。
辞書は特別な工程かもしれませんが「紙の本はこんな精度で作り込むんだよ」というプロセスを丁寧に描いています。今回、ライターさんに誘われて一緒に観に行き、この描写の話で盛り上がりました。紙に印刷してずっと残るものに対して、責任を負うために何をしていくか。「ことばに埋もれて作業していい仕事は羨ましい」というところも意見が一致。言葉をストックしてある棚は見るとワクワクします。
1冊の辞書にいろんな人がいろんな思いを込めているドラマは、難なく入り込めました。西岡さんの「実はいい人」っぷりは映画でふくらんでいます。
パンフは128ページ、主役級だけでなく脇の人やスタッフのインタビューまで載っています。照明や美術、撮影へのこだわりは、辞書を作る人たちのこだわりにも重なります。パンフの途中ページは辞書と同じ紙を使っていて、原作や映画で描かれた手触りを体験できるつくり。
あえてフィルムでの撮影にしたそうで、柔らかい質感は古びた雰囲気のセットとぴったりでした。劇中で使用するキャンペーン用のポスターや辞書デザインも、プロがそのための仕事をしているそう。
今回、原作本を読んで、映画を観て、パンフを読みました。原作本も装丁が凝っていて、本を読んだ人ならわかる意匠になっています。モノとしてとっておきたい「本」。映画もパンフもその世界が継承されているので、ずっと手許に残しておきたい。
「丁寧な仕事」の素晴らしさをいろんな角度から味わえます。
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