書店内で平積み本や棚を撮影するのはOK? わからないので直接聞いてみました

書店内で平積み本や棚を撮影するのはOK? わからないので直接聞いてみました

Facebookやtwitterなどで書店内を撮影した写真をよく見かけます。目的は「友人の本が平積みになっていました」「○○書店でも並んでいました」など、本の中身ではなく「あったよ! 売れているよ!」というお知らせがほとんど。私も取材ライターとして書籍に関わることが増えたのでこういった紹介に興味があるのですが、はたして本屋さんとしてはどこまでOKなのか…?

どうせ実行するならルール内で行いたいもの。何がOKで何がダメなのか、線引きを明確にしたかったので直接大手書店チェーンに聞いてみることにしました。 ※写真は実家の棚

店舗ではなく、本部に直接聞く

■お聞きした書店チェーン

今回聞いてみたのは、独断と偏見で選んだ首都圏の主要書店チェーン8社です。(以下敬称略)

紀伊國屋書店/くまざわ書店/啓文堂書店/三省堂書店/丸善ジュンク堂書店/八重洲ブックセンター/有隣堂書店/リブロ(50音順)

■調査方法

サイトに用意されている問い合わせフォームか、問い合わせ用に公開されているメールアドレス宛から連絡しました。個々の店舗で聞くより全社的な方針を本部に伺ったほうが早いと考えたからです。問い合わせ文面はすべて共通で、以下の内容です。

突然のメールにて失礼いたします、丘村奈央子と申します。
店舗内での写真撮影についてお聞きしたく、ご連絡を差し上げました。

ツイッターやフェイスブックを見ているとよく
「友人の本が平積みになっています」
「棚で面陳になっていました」など、
棚を撮影した写真を見かけます。

さすがに本の内容を撮影するのは禁じられると思いますが、
背表紙や表紙が並んでいる様子を撮影することは大丈夫でしょうか。

撮影自体がダメ、
棚の一部なら大丈夫、
店舗名を明記する(しない)なら大丈夫、
などいくつかラインがあるようにも思いました。

できましたら、御社の方針を教えていただけないでしょうか。

OKであれば
知人の本などを積極的にSNSで紹介していきたいと思いますし、
ダメであれば
その旨をブログなどでもお知らせしたいと考えています。

お忙しいところ恐れ入りますが、ご教示いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

10/7午前に上記の内容を連絡し、ご回答をいただいたら「ブログへの転載は可能か」を引用部分を明示して再度お聞きして、結果をこの記事にまとめています(10/20までにいただいた回答で構成)。

始める前は業界の見解がだいたい一致しているのではと想像していて、その裏付けで念のために聞いてみよう、くらいの軽い気持ちでした。でも回答は各社温度がさまざま。一言ではまとまらないので、以下に個別で掲載します。

各書店の見解

ご回答いただいた順番で紹介します。

■丸善ジュンク堂書店

丸善ジュンク堂書店 お客様センター ご回答

基本的に「無断での店内撮影」はお断りしております。
ただし、丘村様のご事情でしたら従業員が立ち会いの下で棚に並んである本を撮影いただく分には、問題はないかと存じます。

誠に恐れ入りますが、店舗によってショッピングビル・百貨店等ルールが異なりますのでご利用希望の店舗へ、直接お尋ねくださいますようお願いいたします。

 

当然ながら平積み・棚だけでも無断撮影は厳禁。入っているビルやモールによってルールが違うので、個別に聞いてほしいというスタンスでした。なるほど。

午前中にお送りしたら昼前に転載許可までをいただくスピード回答でびっくりしました。どうもありがとうございます!

■三省堂書店

回答は来たけれど、転載は不可。

■リブロ

リブロお問合せ係 ご回答

お問い合わせいただきました店内の写真撮影につきましては、
商業施設によって違った手続が定められていることもあり、
全店舗の統一ルールは設定しておりませんが、
原則、事前申請に基づき、個別に認否を判断しております。

大変お手数ではございますが、ご利用の店舗にて、
スタッフに直接お問い合わせくださいますようお願い申し上げます。

 

こちらもやはり個別に判断されるそうなので、店舗で確認が必要です。お忙しいところ迅速なお返事をいただきありがとうございます!

■紀伊國屋書店

回答は来たけれど、転載は不可。

■有隣堂書店

有隣堂 ショップマスター ご回答

店舗内におきましては、カメラ、ビデオ等による撮影は
ご遠慮いただいております。

撮影自体不可です。転載許諾をとる際に、補足をいただきました。

理由は以下でございます。

1)店舗内での撮影は他のお客様が映り込んだ場合など、プライバシーと肖像権に抵触する怖れがあること、防犯上好ましくないこと。
(現実に書店内での盗撮は店舗運営上大きな問題となっています)

2)一般に書影の掲出は著作権に触れる怖れがあること。

3)弊社が出店している店舗は駅ビルなどが多く、その場合ほとんどの店舗で店舗内撮影はデベロッパー様(施設管理会社)に取材許可の提出が義務づけられていること。

 

おそらく他社でも危惧されていることを明文化すると、こちらに近いのではないかと思います。詳しく教えていただきありがとうございます!

■八重洲ブックセンター

回答は来たけれど、転載は不可。

■啓文堂書店

回答は来たけれど、転載可否の返答まだなし。

■くまざわ書店

回答は来たけれど、転載可否の返答まだなし。

私は撮らないことにしました

上記回答のうち「回答は来たけれど、転載は不可」の書店の中には【撮影自体不可】のほか【こういう条件なら許可する場合もある】などのグレーな答えも含まれます。文面丸ごと転載が難しいのであれば「基本的に撮影不可」とか「この条件ならいいらしい」という要約だけでも載せたいと交渉したのですが、それも不可の書店がほとんどでした。

皆さんが共通して心配されていたのは、条件を出してどちらとも取れる書き方をして「じゃあ、結果として撮影していいのか」と軽々に判断されると困る、という点。今回は丘村が聞いた個別案件に対して回答したものであって、それを全体に応用できると思われてしまうと困る。だから回答に関することは書かないでほしい、疑問があったら個別に聞いてほしいとのこと。これは複数社から言われました。それだけナーバスな問題なんですね。

その中でも転載を許可いただだいた3社には本当に感謝です。ただ、条件付きでOKと言っていただいた2社についても、忙しく動いている書店員さんに許可を求めるのはなかなか難しい。そこで、回答を踏まえて私の場合はこうしようと決めました。

個人客として立ち寄った書店では、写真を撮ることはあきらめる
著者または関係者としてご挨拶に行ったとき、可否を聞いてOKなら撮る

回答で、お客様同士で実際に起こったトラブルについて詳しく教えてくださったところもあります。取材なら事前連絡の上でお客様がいない時間帯を案内している、と補足をくださったところもあります。ネットで調べてみると、カメラを向けただけで不快に思う人がいたり、デジタル万引きを疑われたりするケースがあるようです。

個人客として書店に行っていくら撮影そのものにOKが出たとしても、これらすべてクリアして撮影するのは結構ハードルが高い。ならばここは潔く、個人客として本屋さんに入ったときは平積みや棚を撮るのはあきらめることにしました。

書店で展開している情報は文章でも伝えられます。買った本なら自宅で書影を写せます。たしかに店内の展開写真はひと目でインパクトを与えられますが、無用な誤解を生む元になるなら手放してもいいかなと考えました。

まとめ

…というわけで、一言で「○○なら良いらしいので○○しましょう」とまとめられるほど単純な問題ではないようです。パシャッと撮るのは簡単なのですが、書店としては神経質にならざるを得ない。お互い気持ちよく買い物をするためにも私は撮影自体を控えようと思います。

同じ質問を複数社に送って、いろんなパターンで返ってきたのも面白い体験でした。個人名でいただくところ、係としていただくところ。そもそも窓口がある企業とない企業。自分が問い合わせを受けたときにどんな印象で返したいのか参考になります。

今回、ご回答までに皆さま2往復以上のメールご対応をいただきました。お忙しいところすみません。ご協力いただきましてどうもありがとうございました!

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