インタビューで「短時間・高効率」はない
最近、いろんな方の取材やインタビューの方法をお聞きして思うのは、「短時間で高効率」は難しいということ。事実だけを確認するなら単刀直入に聞いて答えてもらうのが一番ですが、事柄にまつわる思いやその人ならではのドラマをこちらの時間の都合で「言わせる」のは無理です。
逆を考えるとわかりやすいでしょう。自分が聞かれる側になったとき、相手が持っている勝手な目的のために易々と心の奥にあるモノを出してくるかどうか。
効率を上げるために事前に質問を伝えて答えを用意してもらうのは、方向性を確認する、脱線の幅を減らすという意味では有効です。でも「相手が的確な答えを用意する」材料ではありません。
なぜなら、聞いてみて「ああ、その話は面白いな」「文字にできるな」と思うフレーズは当日飛び出した言葉からであって、経験上、絶対に用意した答えからは出てこないからです。用意した答えは無難だけれどあまり面白くない。
本当に使いたい生の言葉を得るためには、相手に負担をかけて事前に用意してもらうのではなく、こちらが準備をして当日「話してもいいな」と思える環境をつくるべきです。
言ってもらいたい言葉があるなら、その事柄を裏付けるような周りにあることをいろんな角度から聞いてみます。何カ所からか聞いて確信が持てたときに初めてこちらから「○○ですか」と確かめてみます。
最短時間で答えがほしい人は、回答に「言ってほしいこと」の片鱗が見えただけで急に全体を捕まえて「それって○○ですよね」と畳みかけてしまいます。これでは話したい相手を止めてしまいます。
単純化した例として、リンゴを挙げてみます。相手に「リンゴ」と発言してほしいけれどなかなか出てこない場合、こんなふうに聞いていきます。
「どんな色なんでしょう」
「赤が多いですけど、白いのもあるみたいですよ」
「皆さんお好きですか」
「結構好きな人多いんじゃないですか」
「形はどんな感じでしょう」
「丸いですねえ、上が少し凹んでますが」
「味はご存じですか」
「おいしいのは甘味がありますが、酸っぱいのもあります」
「旬はあるんですか」
「冬に入る頃にお店にパーッと並んでますね」
ここまで聞いて「リンゴっぽいな」と思ったら初めて聞きます。
「ひょっとして、それはリンゴですか」
「そうですそうです、リンゴなんですよ」
相手の発言で「リンゴ」が出ました。記事にこの人の発言として「リンゴ」と書いても大丈夫になります。
上の例は超単純化したものですが、どんな事柄でも基本は同じです。前半のやり取りがないと相手は納得して「リンゴ」とは言いません。
「どんな色なんでしょう」
「赤が多いですけど、白いのもあるみたいですよ」
「それってリンゴですか」
「ええ、まあ、そうです」
ここで当てることができても、相手は「もうちょっとリンゴについて語りたかったのに終わってしまった」と思います。当てたほうは嬉しくても、話すほうは嬉しくない。
前半がムダだと思って途中で「私の言うことは当たっているでしょう?」という感情込みで「リンゴですよね」と聞き手が答えを出してしまうと、決めつけた感じが出たり、答え自体を先走って勘違いしたりします。
時間はかかりますが、ぐるぐる話が回る間に相手は「ああ、話したな」と思うことができ、満足につながります。これをムダだとは考えないでください。
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