[書評]まず「日本の伝統文化」に触ってみる3冊

[書評]まず「日本の伝統文化」に触ってみる3冊

20130422-092020.jpg日本で生まれて日本文化で育ちながら、あんまり伝統文化に注目していませんでした。歴史や人の趣味として「あるなあ」と思っていたけれど、それ以上を知らない。かといって専門書はハードルが高いのでウロウロしていたところ、意外とこの3冊にエッセンスが詰まっていました。ジャンルはバラバラですがおすすめです。

坂東玉三郎 すべては舞台の美のために (和樂ムック)

坂東玉三郎 すべては舞台の美のために (和樂ムック)
▲大判で美しい写真が豊富

2009年刊行ですが、2013年3月に5刷が出ています。表紙にある「すべては舞台の美のために」の言葉通り、玉三郎さんが舞台のためにどれだけ心血を注いでいるのかが写真と文章で解説されています。

もとは雑誌『和樂』で連載されていたものを、特集記事と足して1冊に仕上げているとのこと。買ってよかったと思ったのは、ただ「きれいだねー」で終わらない本であること。

たとえば舞台化粧の手順、衣装の選び方、織り方、染め方。舞台装置の歴史と裏側、浮世絵からの応用。音楽や小物、作法、出し物によって違う女性の差と見せ方。軸は歌舞伎なんですが、すべて日本古来の文化に根ざしているもの。

詳しく初心者にもわかりやすい文章と関わる人々へのインタビューが載っていて、歌舞伎の奥深さと「日本文化」のある意味「凄まじさ」を垣間見ることができます。ここまでこだわると、ここまで上質なところに行き着くのかと。

レビューで「気が滅入ったときにこの本を開いて気分転換をする」という人がいましたが、気持ちわかります。一服の清涼剤としても。

美貌の文化史 – 神と偶像 (中公文庫)

美貌の文化史 - 神と偶像 (中公文庫)
▲タイトルとちょっとズレがあるかも

先日このブログでもレビューを書いた本。アイドルから芸能に視点を移し、ずっと遡って古事記から考察していきます。美貌というと見た目が重視されるイメージがあるのですが、この本は日本文化が「見た目ではなく醸し出す雰囲気」に美を感じていたことを述べています。

知識がある人だと「ああ、知ってる」という基本を含むかもしれません。でも私の場合は「この視点で事象をつなげたことはなかったな」と思ったので、読みがいがありました。芸事と神事の関係や発展衰退の歴史、何を美徳として目標を設定しているのかなどは面白いです。

個人的には、退屈な小津映画だと思っていた『東京物語』の見方がわかったのでよかった…。映画による日本の描き方も深いんですね。

ガラスの仮面 第24巻 ふたりの阿古夜 1 (白泉社文庫 み 1-38)

ガラスの仮面 第24巻 ふたりの阿古夜 1 (白泉社文庫 み 1-38)
▲昭和50年連載開始

今どこまで行っているんだ…と調べたら、単行本の50巻目が2013年5月刊行予定でした。現在の最新情報ですね。上記のリンクは文庫本版です。

もう連載30年を超える超大作、ざっくり中身を説明すると「天才肌の女優である北島マヤの成長記と葛藤」が描かれています。師匠で演出家、女優でもあった月影千草先生に見いだされ、幻の舞台『紅天女』の主役を手に入れるべくここ20年ほど奮闘中。

この『紅天女』は梅の木の精です。自然と一体化している役の気持ちと舞台をつかむため、登場人物たちが試行錯誤していくのが見どころ。役作りのプロセスが、そのまま「日本古来の文化と自然とは何か」という追求につながっています。

身体的にどう感じて、どう表現するのかまでが登場人物がめざすゴールですが、読み手としては「身体的にどう感じて」という視点だけでも得るものがたくさんあるのではないでしょうか。

物語の後半になればなるほど、日本文化との結びつきが強くなっている気がします。

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