[書評]『美貌の文化史 神と偶像(アイドル)』矢田部英正
- 2013.04.01
- 更新日:2013.07.25
- 書評・評論
身体機能と文化の関係に注目する矢田部氏の新刊『美貌の文化史 – 神と偶像 (中公文庫)』。帯には「記紀神話の女神から現代のアイドルまで日本人が愛でた「美」のかたち」とあるので、サブカルチャー的な分析やアプローチがされるのかと思ったら、もっと深い「日本文化」への考察でした。
まず日本人は何を「美」とするのか。古代、中世、近代、現代と丁寧に辿りながら見えてくるのは「佇まい」や「型」といった身体にまつわる視点。顔やスタイルの美醜とは違うところで「美」を見いだす感覚と、その由来が書かれています。
日本文化の中で暮らしている人なら「あー」と心当たりがある、というか腑に落ちる感覚ではないでしょうか。解説されて初めて、それがどれほど自分の深いところまで染み込んでいるかを意識します。外国の人が読んだら日本を理解する大きな助けになりそうです。
自分が今まで持っていた知識が併走できるのは松井須磨子あたりからで、その前の時代(日本史のほとんど)については知らないことばかりでした。もしくは、知っていたけれど「そんなつなげ方で考えたことなかったわー」という新しい結びつき。
日本の芸能は神様と関係が深いので、祭り上げられる「アイドル」も少なからず神様とつながっています。古くは天の岩戸前で踊ったアマノウズメノミコトから、現代のアイドルまで。一定の年齢の男女に課す「型」が日本独特で存在するのだなあとわかります。
アイドルへの興味から入ったのに世阿弥や出雲の阿国などの能や歌舞伎の意味までなぞっている。古典芸能の知識がない私でも面白く読みました。こんな取っかかりから他の文献をあたったら楽しそうだな。
帯や後ろの紹介文とはちょっと印象が違うかもしれません。でも帯から想像した以上の興味深い文化史が入っています。文庫本なので手軽に読めます。
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