[インタビューズ]ハーズ実験デザイン研究所 ムラタチアキさん 1/4
マイクロソフト「Xbox360」やオムロン「上腕式血圧計spot arm」、デザインブランド「METAPHYS」で知られるプロダクトデザイナーのムラタチアキさん。大学で応用物理を学んだあと三洋電機のデザインセンターに勤務という経歴を持っています。その後27歳で退職して独立、ハーズ実験デザイン研究所を設立しました。
私もメーカーの中で働いた経験があるのですが、大きな企業に所属する人ほど20代での独立を決断しづらい印象があります。ムラタさんはなぜ独立を選んだのか、どんな助走があったのか、直接お聞きしたくなりました。(全4回)
インタビューでは「デザイン」という言葉を飛び越えた世界がどんどん広がり、ムラタさんが持つ領域の広さと発想の原点が見えてきます。
学生時代、現実は「やりたいこと」からずれていた
美術や芸術系の大学からデザイナーになる方が多いと思うのですが、ムラタさんは大阪市立大学工学部、応用物理学科を卒業しています。デザインや美術に触れるようになったのはいつからですか。
絵は昔から好きだったんですよ。父親が建設会社で仕事をしていたので、工事現場で使うような小さい黒板とチョークがおもちゃ代わり。好きな絵を何度も描いては消していました。描いていたのは目の前にあるものではなくて、頭の中に浮かんだ汽車や電車でしたね。
鳥取で生まれて3歳で東京に来たのですが、幼稚園に通うような年に、親が「こいつは絵が好きだから」と画家さんのところへ絵を習いに行かせてくれました。毎週1回アトリエにいくとキャラメルなどのお菓子をくれるんですよ。うれしくてね。昔はなかなか食べられなかったのでそれが目的で行っていたかもしれません(笑)
中学でも絵を描くことを続けていたんですか?
中学は大阪市立の新設校に通っていました。1期生で上の人がいない状態、だからいわゆる不良がたくさん、荒れた学校でしたよ。男子トイレの便器はハンマーで砕かれて全部壊れている。窓ガラスも割られている。弁当を開けたら砂が入っているとか。3年の時は担任が5回も変わりました。先生のうち、一人は失明、自宅の放火による火事、胃潰瘍で入院、転職などでした。
僕はそれを改革せねばと思って風紀委員をやってました。矢面に立っていたので、毎日のように殴られたりして大変でしたけど。ここでは、1期生ということもあって、音楽の時間には校歌を、美術の時間に校章を作る課題がありました。現在の井高野中学校の校章はその時に私がデザインした初めての作品です。
高校は府立千里高校に行かれています。やっぱり落ち着いた環境で学びたいという気持ちがあったんでしょうか。
高校時代は僕の一番ダメな時代かもしれない。中学時代の緊張の糸が切れてしまって。卓球部に入っていても卓球が強いわけではない。勉強に力を入れていたわけでもない。理系のクラスにいましたが志がなくて、パラダイスのような世界で安穏と暮らしていました。
でも大学に進学することになって、理系か文系か選べといわれます。何の社会経験もない子どもに向かってどうして将来の選択を迫るんでしょうね。学校には文理以外の美術などの選択肢がなく、理系の学科を志望することにしました。
超新星とかブラックホールとかSF的なものは大好きなんです。関連本もよく読んでいました。でもそれは言葉の世界であって、授業では数字の世界。相対性理論とかシュレーディンガー方程式とか、グリーン関数とか、いろんな方程式が黒板を埋め尽くす。決まっている解に向かって演繹するという退屈。めざしているものとちょっと違うなあというのは在学中からありました。
でも応用物理の卒業論文を書かれたんですよね?
書きました。タイトルは『オージェ電子分光法によるカッパー・ベリリウムの研究』です。カッパーは銅、カッパー・ベリリウムは合金です。この素材は電子を1個当てると2つ電子が飛び出す性質があります。宇宙の彼方からやってくる微細なフォトンやフォノンを計測するのは大変なんですが、この原理を応用して電子増倍管を作り、微弱電流の検知が可能となり宇宙線を計測できるかもしれない、という兼松研究室の藤井助手の研究テーマを補助していました。
これは宇宙空間に近い真空状態でないと実験できないので装置も全部作るんです。超高真空にするときは徹夜してのプロッター計測が続きます。こうして卒論が完成しました。(続く)
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