「これからの働き方と日本の競争力」ライフネット生命 出口社長講演

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今日、ライフネット生命を立ち上げた出口治明社長の講演会に行ってきました。テーマは「これからの働き方と日本の競争力」。正社員、派遣、バイト、フリーランスを経験している自分に取って「どう働く?」はいつも大きな問題でした。経営の第一線にいる方はどう捉えているのか、こんなお話が出てきました。

社長というと胸を反り返してずんずん歩いてくるようなイメージがあったのですが、開演5分前の出口社長はスッとカバンを持って会場に入ってきて、とても柔らかい物腰のままちょっとセッティングをされていました。

三重県出身、京大を出ていることもあって語り口は京都寄りの関西弁(に聞こえました)。還暦を過ぎた方から見たら若造だらけの会場だったと思うのですが、皆さんに丁寧に接していて勝手な「社長像」が見事に崩れました。すみません。

はじめに「経営する人はみんなを食べさせなければいけない、これが第一義」という趣旨のことを話されて「確かに」と納得。私はまだ自分の食い扶持だけを気にしていればいいのですが、会社を持ったり誰かを雇っている人は「その人と家族」も背負わなければいけないんですよね。

かといって雇われる側は経営者ががんばるのをただ見ているのではダメなわけで。働くためにどう世界を捉え直すとよいのか、ポイントを挙げながら説明がありました。自分の中に残っているものをいくつか紹介します。

■ まず歪みのないように世界を知ること

主観が入ると世界を「好きな形」に捉えてしまうのは人間のクセ。改善や進歩をするためにはまず現状を歪みのない状態で把握する必要がある。

①タテ(業績や歴史のような時間軸)とヨコ(同業他社や世界の動きなど空間軸)を意識する
②感情ではなくて数字やロジックで世界を見直してみる、世の論調が正しいとは限らない
③「本・旅・人」から自分にないフィールドや思考を貪欲に学ぶ

■借金の返し方3通り

踏み倒すのが歴代1位(笑) でも近代国家成立以後は信用や国債に響くので無理。インフレにするか、増税にするかが残りの2手。どちらも額面的には同じ効果があるが、運用やコントロールの範囲を考えると増税のほうが現実的という意見が大勢を占めている。

■日本はいま何歳か?

平均年齢は48歳くらい、お金に働いてもらって金利を生み出すのが合っている。でもまだ構造的に輸出主導経済のままで、20歳くらいの戦略から変わっていない。薄々気づいても解決を先延ばしして今まで来てしまった。貿易黒字と国内で賄うぶんで回していたけれど、昨年に貿易赤字を出してそのパターンが崩れつつある。さてどうするか。

■労働力の流動化がカギ

人口が減って繁栄した国はない。まず人口を増やすこと=子どもを増やすこと=子どもを生みやすくすることは必須。ライフネット生命はそのために立ち上げた。子育て世代がもっと楽に子どもを産み育てられるように。

働く人を縛らないことも大切。マクロ的な視点から生産性を見るなら、だぶついた人材のクビを切っていったほうが生産性が上がっていく。社内で生殺しにするのではなく、新しい活躍の場に円滑に移ってもらう方法として。大企業が大卒や院卒を囲い過ぎて中小企業に人材が行きわたっていない。実は、中小やベンチャーのほうが成長する可能性が大きい。大企業はもう売上を10倍100倍にすることはないが、これから育つ企業にはその可能性がある。人材をそこへ回せば経済は活性化する。

■投票率が10%上がると顔ぶれが変わる

若い人が「政治家が誰も良い人がいないから」と棄権するのは愚かだと思う。投票で変えていくしかない。地方の年配者が強い現在は、地方の年配者に向けた政策を出す人しか当選しない。子育て世代を知って改善しようとする人は少ない。個人的には東京にいる議員は10kgの重りを乗せたベビーカーで1時間都内を移動してほしいと思っている。そうすればどれだけ暮らしにくいかわかるはず。(←大賛成。できれば20万円で1ヶ月生活(家賃込み)にもチャレンジしてほしい!)

■自分に競争力をつけるには?

人と違うことをできるようにする。1時間の仕事を引き継いだら「どうやって30分になるか」を考える(=人と違うことをしないといけない)。ただ、違うことを思いつくためには膨大なインプットがなければ話にならない。読書、旅、人と話すことで自分のフィールドを広げていくべき。若い人ほどやってほしい。そのインプットが新しい発想を生み出すもとになる。

■人をまとめる立場になったら

人は石垣と同じ。さまざまな形を生かしたほうが強固な石垣になる。管理者は角を削って丸くするより間を埋めること(潤滑油たること)を意識する。「ホウレンソウ」を強要する上司にろくな人はいない。上司も自分の足で部下の情報を探すように努めたほうがよい。

■人を本当にやる気にさせるには

そうしなければ生活が成り立たないくらい仕組みが変わってしまえば人はやるようになる。根本の仕組みを見直すのが一番効き目がある。サムスンのように、一定の英語レベルがないと採用されないなど。

…これ以外にもいろんな話が出てきましたが、書ききれません^^;

■質疑応答

「首切りは企業にメリットがあるけれど、受け止める側がまだメリットを感じないので流動化にはなっていない。受け止める企業が『これは得だ』と思える仕組みはどうすればよいか」をお聞きしました。出口社長は「卵が先か、ニワトリが先かに似ている」として、以下の回答をくださいました。

ミクロとマクロでは見る側面が変わるけれど、マクロ的に考えるのであれば、仕組みができあがるのを待つより先に、どんどん首切りを実施してしまうほうがよいと考えている。一時的に失業率は上がるかもしれないが、現状に即して「受け入れ」の仕組みができあがってくるはず。それが一番早いと思う。

上記の回答は生活保護などのセイフティネットがしっかりした状態で、という前提がありました。

講演全体を通して感じたのは「待つよりも動いたほうがいいよ」というメッセージ。不満があれば改善してみる、発言してみる、動いてみる。そのための考え方や方法をお聞きした時間でした。

ちょっと自信になったのは「1時間の仕事をどう短くするか」が仕事術ブログに通じていることと、「人に聞くことが大事」が聞き方に通じていること。細々と「こうしたほうがいいだろうな」と続けていた活動を是と認められた気がして安心しました^^

ライフネット生命が「子どもを生みやすい社会にする」というミッションを持っていたのを初めて知りました。生命保険は将来の不安を軽減します。経済的な不安が少しでも減れば、若い世代はもっと積極的にお金を使ったり、家庭を持ったり、子どもを育てたりできます。いまの生命保険は必ずしもその役割を果たしていない、という思いから出口さんはライフネット生命を作ったそうです。

今日の講演会を含め「どこにでも行きます」とおっしゃっていたのは、会社を知ってもらうだけでなく子育て世代の負担を減らしたいからでもあるのだなと思いました。

ほかにもブログをアップしている方のリンクです。それぞれの視点から書かれているので、総合すると全体像が見えてくるかも^^

★みきしのさん

★ぷぅコッコさん

★技術屋かずさん

★踊るOL。さん

★もんざさん
ライフネット生命 出口社長のお話を聞くにTRY その1
ライフネット生命 出口社長のお話を聞くにTRY その2

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