[インタビューズ]日本身体文化研究所 矢田部英正さん 3/4
日本身体文化研究所 矢田部英正さんへのインタビュー第3回(全4回)です。
理想の姿勢を、椅子で再現する
「立ち姿勢」から「坐り方」や椅子に興味が移っていくきっかけは何でしたか。
せっかく立ち姿勢でいい形を見つけたのに、椅子に坐って卒論を書き始めた途端に腰痛が発症しました。「これは椅子のせいだ」と思ってからだにいい椅子を求めるようになりました。
はじめは北欧家具に惹かれて、坐り心地のいい椅子を求めてヨーロッパまで見に行きました。西ヨーロッパの主要都市はほとんど行きました。フィンランド、デンマーク、フランス、イタリア、アイルランドなど、それぞれの国で日常的に使われている椅子が、とても心地よかったことが印象的でした。結局、ハンス・ウェグナーというデンマークの椅子デザイナーの作品「PP701」を日本で購入しました。しばらくはそれが「世界で一番いい椅子」だと思っていたんですが……使っているうちに「もっとこうだったらいいのに」という不満が出てきてしまって(笑)。
自分に理想の姿勢のイメージがあると、具体的な注文がいろいろ出てくるんです。「こう支えてほしい」とか「お尻のところに弯曲がほしい」とか。そうなってくると、もう自分でつくるしかありません。
その頃、新宿のリビングデザインセンターで「姿勢と椅子」について講演を行った際に、「あなたの理論をぜひ形にしたい」という作家さんが現れて、一緒に椅子をつくることになりました。1作目が完成すると雑誌やテレビの取材が次々に舞い込んできて、TBSの『ニュース23』でも特集番組をつくっていただきました。心ならずも「椅子デザイナー」として世に名前が出てしまって、「もしかしたら、これで食べていけるかもしれない」と。気がついたら椅子づくりにのめりこんでいました。
姿勢の研究から始まって、心地よい椅子を求めてヨーロッパ各地を回り、自分で椅子までつくってしまった。その過程をロードムービーのように綴ったエッセイは『椅子と日本人のからだ』として出版されました。
これからはどんな活動が重要になっていくのですか。
身体技法という領域をどう形にしていけばいいのか、いまだに暗中模索の日々ですが、執筆、製作、教育と、それぞれの活動のなかで、「からだの自然」を開拓していくことを続けたいと思っています。(続く)
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