「聞いて書く」だけなら日本語の読み書きができる人みんなが可能です。でもわざわざ報酬を発生させて「インタビューライターが聞いて書くこと」の意味とメリットは何でしょうか。4つの利点を挙げました。
インタビューに慣れているライターであれば出来上がりを構想しつつ取材を進めるので、その場で「この話はここに入れられます」「この話は今回の筋から考えるとカットしたほうがよいと思います」「あふれた内容はこの項目でフォローできます」といくつも案を出せます。どのくらい文字数を調整すべきか、聞きながら話の密度の目安がつくからです。
取材後はクライアントには「こんな主旨でまとめます」とお伝えし、書けること/書けないことについて必ず調整を行っています。「企業の都合で実は具体的な数字が掲載できない」「つい話が弾んだけれどここは書かないでほしい」などのご要望も最後に確認します。これらをインタビューの現場で共有すると大きな直しは起きません。書いてからではなく、現場で納得していただくのもライターのスキルです。
ざっくりと「この人に話を聞こう」とだけ決めて取材相手に会っても、必要な情報を得るのはとても難しいでしょう。聞き手の目的が定まっておらず、聞くべき内容を絞っていないからです。ライターは事前に制作記事の狙いと求める効果を聞き、その趣旨に合った話をしてもらえるように質問を準備します。
当日は、必要のない情報をカットしつつ、しっかり聞きたい部分は逃さず聞けるファシリテーションが欠かせません。ライターはそれぞれやり方やコツを持っています。頭の中で執筆のフォーマットを考えながら、話の流れに応じたアドリブが可能です。
インタビューで聞いた順に書くこともできますが、読みやすさを優先するなら必ず構成の加工が必要です。ライターなら、どんな話題から始めれば読んでくれるのか、どの事例をピックアップすると良いのかを考えて内容を入れ替えます。
対象の読者がどんな語彙を持っているかを考えながら書くのも大事なポイントです。若い女性が対象なら「リンクする・つなげる」と書くところを、シニア層が対象のテキストでは「繋げる・関連づける」と言い換えるなど、語彙や言い回しを変更して狙った対象が読みやすい日本語に仕上げます。
私に限らず、上記3つはプロとして活動するライターなら多くの人が兼ね備えているスキルです。もし皆さんがテキスト作成を手がけて「聞いたけれどまとめるのに1日かかった」「長く聞いたわりに有用な情報が残っていない」という悩みがあったとしたら、ぜひプロのライター/インタビュアーに頼んでみてください。コストはかかりますが原稿の質は確実に上がり、その時間で皆さんは本業の仕事を進めることができます。