欲しいデザインがない、ならば自分で作ってしまおう。

レザーアーティスト 照下稔さん

モノを生み出す仕事で最初に登場の照下稔さん。大阪府在住で、会社員として勤めながら自宅のアトリエで革製品を制作・発表している。自らの手でモノを作り出していく魅力について伺った。


照下稔さん照下稔さん解説 照下稔さんにはいくつもの顔がある。1つは企業での空間デザイナー。もう1つはオリジナルの革製品を作り上げるアーティストの顔だ。

バッグや小物など特定の分野に絞って制作を進める人が多いこの業界で、照下さんはジャケットやパンツなどの服飾、帽子まで幅広く手がけている。そしてミシンを使わない手縫いが基本。主に革ひもで組み合わせていくが、糸を使うときもひと刺しずつ心を込めて手で縫っていく。

「注文品を作っている期間は、その人が使っているシーンを毎日想像していますね。名刺入れならこんなふうに出してくれるのかな、とか。夕飯のときもずっと話しているのでうちの妻に怒られるくらい」

■ 仕上げられる充実感

サラリーマンとしての職を持ちながら革製品を作るようになったきっかけはなんだろうか。

「会社ではCADを使ってイベントのディスプレイをデザインしています。でも設計をしたら作るのは別の部署で、出来上がりを自分で実感することが少ないんです」

5年ほど前に肺を患って入院し、仕事を振り返るきっかけになった。そのときに「自分の手で完成まで仕上げられる、生活に役立つ」アイテムとして革製品の制作に行き着いたという。初めは東急ハンズで革細工のキットを買って作ってみた。1つ作るとデザイナーとしてのこだわりが頭をもたげて、どんどん夢中になった。

「もともと70年代のミュージシャンが着ているレザーアイテムが好きでした。でもそのシルエットで革ひものステッチを使ったものがない。サイズも大きすぎて。だから僕が欲しいものを自分で作ることにしたんです」

■ オーダーしてくれる人を大切にしたい

現在は企業人としての仕事をこなしながら、表現したい世界を革製品に託している。そんな自分の作品を見て問い合わせをくれる人は「お客さん」というよりもっと対等な存在だという。

「革製品を作る楽しみは、形が残って相手に喜んでもらえること。そして受け取った人の生活に彩りやサプライズを起こしていけること。僕にわざわざオーダーしてくれる人は、本気でその形が欲しいんだと思うんです。メール1本出すのも勇気がいるじゃないですか。僕はその思いに120%で応えたい」

照下さん曰く、革製品は「着ること、持つことができるアート」。ブログや作品を通してポリシーを知り、革談義に自宅アトリエを訪れる人もいる。自身の世界をもっと広げるために、将来はワークショップや店舗のように革好きが集まる場を作る予定だ。

てるした・みのる
1967年、香川県小豆郡生まれ。大阪芸術大学卒業。幼い頃から絵と音楽に親しみ、学生時代はミュージシャンとしてテレビやラジオ出演を経験。現在は会社に勤めながら革製品を制作。ライブハウスでの活動も続けている。

公式ブログ:音を感じるアートなレザーブランド『Bobby Art Leather』
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2011.8 取材


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